細胞内の生理的条件下でのタンパク質相互作用を解析するため、高親和性抗体と低ノイズのビーズを用いた細胞内微量タンパク質複合体の免疫分離法を開発した。 細胞内でのシグナル伝達や転写調節には複数のタンパク質が相互作用し、複雑で繊細な調節を可能としている。これらのメカニズムに関与するタンパク質は微量で通常の電気泳動やカラムクロマトを用いるプロテオームの技法では効率よく検出できない。また、強制発現法や2ハイブリッド法を用いる相互作用解析では、候補タンパク質を検出することはできるが、生理的な状態を反映しているといえない。本研究では、独自に開発したバキュロウイルス発現系を用いる免疫法や高感度検出系を組み合わせるスクリーニング法などにより、ターゲットタンパク質に対する高親和性の抗体を作成し、さらに非特異的結合を低減する表面処理をほどこした磁気ビーズに抗体を固定化してターゲットタンパク質を効率よく集めることにより、核内受容体HNF4αなどの転写因子を105個程度の細胞より検出することに成功した。この免疫分離法とショットガンLCMS/MS法を組み合わせることにより、転写調節因子について10^6個程度の細胞より数種類の複合体タンパク質を同定し、MS/MS/MS解析により複合体を形成する内在性のタンパク質についてリン酸化修飾を同定することができた。また、細胞膜上に複合体を形成するタンパク質についてもMS解析が可能であることがわかった。 従来、相互作用するタンパク質の同定には大量のサンプルが必要であったが、本研究で開発された方法により、少量で相互作用するタンパク質のダイナミズムを解析することが可能になると考えられる。
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