まず、開始コドンとして機能する必要条件を探索するために、64個全ての3塩基コドンについて、開始コドンとして機能するかどうか検討することを試みた。このために、1)アンチコドンを改変した開始tRNAの作製、2)開始tRNAへの蛍光標識アミノ酸(BODIPY FL-aminophenylalanine)の付加、3)対応する開始コドンへ置換したstreptavidin遺伝子の作製、を行なった。16種類のコドンについて、無細胞翻訳系によるタンパク質合成、および、発現タンパク質のSDS-PAGE分析とその蛍光イメージ観察を行なった結果、新たに複数のコドンが開始コドンとして利用できることを見い出した。 続いて、アンバー開始コドンUAGを用いて、蛍光標識アミノ酸のタンパク質N末端への導入を検討した。種々の蛍光基を結合させたメチオニンおよびアミノフェニルアラニンについて、それらをtRNAに付加するための中間体(アミノアシル-pdCpA)を合成し、それらを用いてアミノアシル化開始tRNAを合成した。無細胞翻訳系によるタンパク質合成、および、発現タンパク質のSDS-PAGE分析とその蛍光イメージ観察を行なった結果、種々の蛍光標識アミノ酸が翻訳開始過程において基質として許容されることを新たに見い出した。また、メチオニンに蛍光標識したものは一般的に導入効率が高いことが確認された。以上の実験結果から、開始過程においては基質特異性がかなり広いことを明らかにした。
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