開始コドンとして新たに4塩基コドンについて探索を試みた。ストレプトアビジン遺伝子の開始コドンを種々の4塩基コドンに置換し、それとともに大腸菌由来の開始tRNAについてアンチコドンを相補的な4塩基に置換した。開始tRNAにBODIPYFLを含む蛍光標識アミノ酸を付加して、無細胞翻訳系においてタンパク質合成を行なったところ、いくつかの4塩基コドンにおいて比較的高効率な翻訳開始と蛍光標識アミノ酸の導入が可能であることが見い出された。また、開始過程においては基質特異性が広いことが既に見い出されることから、さらに種々の蛍光基や機能分子の導入可能性についても検討を行なった。実用性の高いCy3、Cy5、Fluorescein系の蛍光色素や、ビオチンを付加したアミノ酸誘導体を開始tRNAに付加して、UAG開始コドンによりタンパク質N末端への導入を試みたところ、開始効率は蛍光基などの構造に依存しており、翻訳開始においてはそれに適した構造があることが明らかとなった。さらに、より効率的な開始tRNAを探索するために、種々の生物種由来の開始tRNA配列の持つtRNAを作製して、その翻訳開始活性を評価した。その結果、いくつかの生物種由来の開始tRNAにおいて従来の大腸菌由来開始tRNAと同等程度の活性を持つものが同定された。この結果より、今後さらに幅広い生物種の開始tRNAを探索することで、より活性の高いtRNAを見つけ出すことのできる可能性が示された。
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