研究概要 |
(1)人乳ラクトフェリンを用いたO-結合型ヒト特異的糖鎖抗原の単離精製、構造決定: 1CF11は、人乳やヒト唾液などのヒト分泌物中に含まれる様々な糖タンパク質を認識するモノクローナル抗体である(Kanamaru et al.,BBRC,249,618,1998)。本研究課題においては、ヒトミルクラクトフェリン(hLf)からヒト特異的糖鎖抗原(1CF11抗原)を含む糖ペプチドフラグメントの単離を試みた。hLfをプロナーゼにより48h消化し、Superdex75カラムにより、分子量800〜1300の糖ペプチドを得、ConA-Sepharoseカラム及び1CF11抗体カラムにより精製した。これらをODS120T逆相カラムに供し、2種の糖ペプチド(Pep1,Pep2)を単離した。Pep1からはXSQE、Pep2からはAPGXの配列が読み取れた。MALDI-TOF MSによって分析したところ、Pep1はSSQEペプチド、Pep2はAPGSペプチドのSer残基にヘキソース2糖が結合した分子量を得た。単糖分析により、Pep1からはGlc、Pep2からはManとGlcが検出された。更にグリコシターゼ消化により、Pep1はGlc-Glcの2糖、Pep2はMan-Glcの2糖であることが示唆された。 (2)糖鎖ライブラリーの合成と1CF11抗体に対する阻害活性: グルコビオースを用いたInhibition ELISAを行ったところ、Glcα1、3Glc(nigerose)、特にβグリコシドでSerに結合する構造のみに強い活性が見られ、1CF11糖鎖抗原の1つがGlcα1、3Glcβ-と考えられ、もう一方はManα1、3Glcβ-の構造を持つことが示唆された。これらのO-結合型糖鎖はこれまでにない新規な構造であった。
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