研究概要 |
植物表面へのイオン照射時に発生する巨大分子の生成に着目し,生体分子をターゲット上に導入してスパッター衝撃し,飛行時間差法(TOF)にもとついて生体分子の分析が行える測定系構築の可能性について検討した.植物表面への粒子入射については,研究期間中に取得したデータを論文発表した.実際の分析測定系の構成として,ビーム入射系に偏向型EXB質量分析器を用いれば装置の小型化が図れ,質量数720のC_<60>イオンを十分に分離できることを明らかにした.この結果は論文発表準備中である.また,TOF分析に不可欠となる単パルスイオンビームを生成するため,表面生成型負イオン源のコンバータバイアスを制御する方法を開発し,その有効性を確認した. 測定系全体についてみると,最初の計画では大型の真空容器内にターンテーブルを設置し,この上に質量分析器を取り付けてスパッター粒子の角度分布を測定する予定であったが,真空度の確保の問題から当初の任意角度による計測を断念し,入射角-出射角を90度に固定した系を構築した.このことにより,四重極質量分析計の動作も安定するようになった.また,低エネルギー粒子の分析を行うため,コールドフィンガーターゲット上に試料を供給することにより,分析容器の必要真空度を確保できる可能性のあることも分かったが,未だに試料を安定にターゲット上に供給する構造は完成していない.さらに信号が少なく,統計的に意味のあるデータを得るまでに時間がかかると言う問題の解決のため,粒子束途中にイオン化室を挿入して信号強度を上げる設計としたが,ターゲットに熱付加を加えず,効率よく巨大粒子を分解することなくイオン化する構造が実現できていない.装置自体は今回の研究で完成しているので,今後最適化を行った上で最終報告をまとめる予定である.
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