10月と12月にそれぞれ現地調査を行ない、以下の知見を得た。(1)10月にはチョウ、ハチ、ハエ、コウチュウ、カメムシの計5目に属する60種、12月には同5目に属する約40種の在来昆虫の訪花を確認した。いずれの時期もチョウ目が優占していた。ミツバチは10月と12月のいずれの時期にもセンダングサを利用していたが、12月の方が明らかに訪花個体数が多かった。(2)10月には、多くの8時台からセンダングサ小花が開き始めて花粉放出を開始し、12時台から柱頭が花粉を受け取れる状態に変化した。一方、12月には、9時台から多くの小花が咲き始めて花粉を放出し、14時台以降に柱頭裂片が開いた。いずれも時期にも、日没直後になってもまだ花粉が残存している場合が頻繁にみられた.これはミツバチを以外の多くの訪花昆虫が吸蜜のみを目的として訪花したためである。(3)いずれの季節においても、ミツバチはセンダングサ小花が咲き始める時間帯にあわせるようにして花に飛来していたが、最も多くの採餌個体が見られるのは午後以降であった。小花の性変化は、ミツバチ訪花による接触刺激以外にも気温によっても変わるらしく、ミツバチの訪花がどの程度すみやかな性変化を行なううえで重要なのかを今回は解明できなかった。(4)頭花あたりの稔性種子率は、(生育場所による違いは多少あるが)10月がおよそ70%だったのに対し、12月は50%未満であった。また、10月のミツバチの観られいない場所(小浜島)においても、同時期の西表と同じくらい高い稔性種子率が得られた。10月と12月にみられる稔性種子率の相違は、ミツバチの訪花個体数の多寡ではなく、在来昆虫の種数と訪花個体数に関する時期的な相違によると推測された。
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