研究課題
ハナショウブは、わが国が世界に誇る伝統的な園芸植物であり、遺伝資源、文化財としての価値を兼ね備えており、これらの品種群は日本各地の湿地に自生するノハナショウブを元にして改良されたといわれているが、ここ数年の地球温暖化あるいは自生地での乱開発により絶滅傾向にある。また、江戸時代に作出されたハナショウブの品種は、長年に渡る株分け繁殖などにより劣化が著し今後の維持・管理が非常に困難である。したがって、いずれも早急な保護対策の確立が急務である。18年度はノハナショウブにおいては、本州でもっとも自生地が多い青森県のほぼ全域と、本州中部の自生地に出向いて生態調査、および植物体の形質調査を行った。その結果、これまでの地域と同様に花器官の形態、色素変異が多く認められたが、中でも青森県でピンク色の花色を有する系統を、富士山において青色花色を有する変異系統を学術上初めて見出したので、新花色を有する品種の育成素材として重要な遺伝資源を見出すことができた。さらに、青森県では海岸地域で海水に浸漬されながら自生す流系統、標高1000mの火山性土壌下で自生する系統を発見することができ、環境適応性を確認することができた。また、明治神宮の林苑に栽植されている門外不出の品種を、今後4年間に渡って維持・保存することになった。これらの品種は浮世絵などに描かれている品種と同じものが多く、文化財的な価値が非常に高いので、江戸時代に栄えた園芸文化を研究する上で重要な素材である。このように、18年度は日本各地の自生地のほぼ半数に渡る地域で、ノハナショウブの系統調査を行い、収集可能なものを維持・保存することができた。また、一昨年の大船種に続いて、門外不出の明治神宮の江戸古花の収集ができたので、系統進化、文化的側面の両面からの研究が今後可能となった。
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園芸学研究 6(1)
ページ: 455
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花菖蒲 第35号
ページ: 16-19
27^<th> International Horticultural Congress, Abstracts Abstract
ページ: No.2083
27^<th> International Horticultural Congress, Abatracts Abstract
ページ: No.2223