研究課題/領域番号 |
17651130
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
古矢 旬 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90091488)
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研究分担者 |
平石 貴樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (10133323)
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キーワード | 宗教 / 近代 / ベンジャミン・フランクリン / アメリカ独立革命 / 宗教的多元性 / 教派主義 / 徳と信仰 / 政教分離 |
研究概要 |
19世紀のアメリカ合衆国衆国における、近代と宗教の相克に関する研究を開始するにあたり、初年度である本年は、19世紀の入り口におけるアメリカの憲法・政治体制がと「宗教」一般の関係を理解するために、2度の研究会を行った。そこでは、研究代表者古矢が、(1)植民地時代における多元的宗教世界と政治的統合の連関について、(2)世俗的であるはずのアメリカ革命原理が、いかなる宗教的次元を含んでおり、さらに革命の次世代への継承過程でその連関がどのように変化したかについて、話題提供し、分担者平石が19世紀アメリカ文学における「宗教」の遍在という現象からコメントを加えた。また研究会には、そのほかに宗教と政治の関係を専門とする政治学の専門家、アレクシス・ド・トクヴィルの専門家、マーク・トウェインの専門家、そして植民地時代から建国期におけるアメリカの政治史を専門とする専門家の参加を仰ぎ、課題に関する多面的かつ文脈史的な討議を深めた。最後に本年度は、3月末に札幌において文学の観点から「近代と宗教」問題の理解を深化させるための拡大研究会を開く。その際の中心的な論点は、アメリカ・ルネサンス以後登場する、いわゆるアメリカ独自の文学的パースペクティヴに内在する、宗教性の存在にある。 総じて今年度の研究会の到達点は、研究課題が示唆する「近代と宗教」という問題を、「近代vs宗教」という両者の対立の位相だけにおいてみるのでは不十分であろうという認識にある。アメリカの場合、問題はむしろ「近代」の進展とともに、「宗教」も衰退するどころか、むしろ隆盛をみてきたところにあり、両者の矛盾対立よりは共存を支える社会や思想の特質をとらえなければならない。次年度以降の研究展開は、本年度の初期的研究の結果行き着いたこの新しい課題に取り組むところからはかられるであろう。
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