本研究は、カリブ海諸国と東南アジア島嶼部それぞれにみられる森林減少問題の要因・背景に関して地域間比較をおこなうことを目的としている。カリブ海諸国と東南アジア島嶼部において異なる点は、西欧起源の論理・制度(たとえば、森林管理制度、土地開発の政策、農業システムなど)による影響の強弱である。本研究では、森林減少問題の背景として、西欧起源の論理・制度の要因がどの程度効いているのかを、その影響度が大きく異なる2地域のフィールドワークにより実証的な検討を目指した。本年度は、ジャマイカ、キューバ、ドミニカ共和国のカリブ海諸国において約1か月、フィリピンにおいて約1か月のフィールドワークをおこなった。 フィールドワークから明らかになったことは、カリブ海においては、互いに隣接しているキューバ、ジャマイカ、ドミニカ共和国の間においても、森林を含めた土地利用の状況は相当異なるということである。社会主義体制で海外(とくに米)からの物資が入りにくいキューバ、旧英領で農業生産物の自給率の低いジャマイカ、米の経済的影響を強く受けながらも比較的自給率が高いドミニカ共和国というようにこれまでのあるいは今日の社会・経済的背景が相当異なる国々の間では、土地利用の状況も当然異なると考えられる。東南アジア島嶼部においては、フィリピンは旧宗主国のフィリピンの影響を相当強く受けているのではないかと予想していたが、人々の振る舞いや土地利用のあり方は、やはり私がこれまでマレーシアやインドネシアで見聞してきたアジア的な雰囲気が相当強かった。 17年度のフィールドワークを経て、これまで経験の少ないカリブ海諸国の現場の状況がやはりうまく捉えられない。18年度では東南アジア島嶼部よりもカリブ海諸国に重点を置いて現場での経験を深めたい。
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