本研究では、カリブ海諸国と東南アジア島嶼部それぞれにみられる森林減少問題の要因・背景に関して、おもにフィールドワークにより地域間比較をおこなった。 平成17年度には、カリブ海諸国のキューバ、ジャマイカ、ドミニカ共和国において、また、東南アジアのフィリピンにおいて調査をおこなった。キューバは、社会主義の影響を受け、コーヒーやサトウキビ栽培に半強制的な労働力の配置替えがみられた。ジャマイカは、近年では、農業よりも出稼ぎや観光業からの外貨が経済を支えているようである。ドミニカ共和国においては、農山村の社会が何人かの指導力のある人の周りに組織が形成されている。フィリピンでは、ルソン島からミンダナオ島までおもだった島をめぐった。ルソンのイフガオの棚田地帯、ボゴールのサトウキビプランテーション、ミンダナオの開拓村など、それぞれの地域に特徴のある土地利用がみられた。 平成18年度には、ブラジルを訪れた。ブラジル北東部は、アフリカからの奴隷により、プランテーションが経営されてきた。近年では、バイオ燃料の需要が高まり、サトウキビ栽培が再び盛んになってきた。東南アジア島嶼部では、インドネシアの中部スラウェシを訪れた。先住民による焼畑農耕が、道路の建設、貨幣経済の侵入、キリスト教の布教などによって、農業儀礼、技術、土地利用に影響がみられた。 東南アジアとカリブ海を比較する視点を得ることが本研究の目的であった。それは、農山村に長年住む人々の農業を含んだ土地利用と森とのかかわりであるというのが結論である。彼らが暮らす「里山」的な土地利用を生かすことで、その周囲の森林も保全される。互いの「里山」の状況を分析、比較することにより、両地域の「里山」の活性化を図れる。
|