研究概要 |
平成18年度の研究計画は、(1)コミュニティ・エンパワメントの典型的実践例の収集、(2)関連文献・資料、聞き取り調査の結果の測定・尺度分析、(3)多角的な社会調査法の習得 (4)最終年度に向けての研究結果の発表準備であった。 (1)に関しては、沖縄の琉球政府時代の公衆衛生看護婦の元・看護課長(92歳)にインタビューする機会を得た。インタビューの焦点は、前年度の研究仮説である「公衆衛生看護婦を指導したUSCAR(米国民政府)の女性担当官(ケーザー、ワーターワース)は、1930年代後半のルーズベルト大統領の下に施行された、僻地に若い人材を派遣して地域開発と失業対策を手掛けた"ニューディール政策"をモデルとして、沖縄で駐在保健婦制度を開始したのでは」というものであった。しかし今回のインタビューからは、それを確信づける根拠を得ることができなかった。そのため来年度の課題として引き継いでいきたい。その他、戦後復興期における保健医療政策に関する有識者にインタビューした。その結果、一般に戦後復興期に女性がエンパワメントする理由として、人口構造の偏りによるもの(すなわち男性が出兵、死亡することにより(国)家を守るのは女性しかいないという必然的要因によるもの)という新仮説を導き出すことができた。 (2)のエンパワメントの測定、尺度分析に関しては、幾つか文献・資料を入手し検討したが、さまざまな分析方法があることは確認できたものの、どの方法が抽象的な概念である"エンパワメント"を測定するのに最適であるかを結論付けるまでに至らなかった。最終年度である平成19年度の課題である。 (3)に関しては、スウェーデン国カロリンスカ研究所での研修に参加し、より深いフィールド調査法を学んだ。 (4)の研究結果の発表準備に関しては、平成19年6月に開催される国際学会(太平洋学術会議)にて、「Empowerment of Public Health Nurses in Post-World War II Okinawa」,「Maternal Health Workforce in Northern Okinawa in the 1960's」の2演題が平成18年度に正式に受理された。
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