研究概要 |
(1)平成18年度は「身体性とリズム性」をテーマに研究を進め、身体性の問題がリズム性の視点からどのようた論じられるかを明らかにし、その社会論への応用可能性を検討することを目指した。 まず「反転ずる身体とパースペクティヴ性-メルロ=ポンティ後期思想の射程」という論考では、現象学的な知覚論軸・時間論で使用される「射映」の概念を、パースペクティヴ性の問題として取り上げ直すとともに、その身体論的な意義を明らかにした。こうして身体の「リズム性」が、メルロ=ポンティの身体の反転性の問題系との突き合わせによって、他者との関係の根源的な創設に関ることを明らかにした。 また単著『デリダーきたるべき痕跡の記憶』においては、デリダの「間隔化」の概念を取り上げ、それを時間論へと投げ返すことにより、,リズム性の概念が社会論にも後半に応用可能であることが明らかになった。またシンポジウムロ頭発表「生の権力と新たな生の形式の発明」においても'、本研究で収集した資料を利用し、ミシェル・フーコーの「生の権力」の概念の哲学的射程を、「死の瞬間」という時間論的な視点から明らかにすることができた。これらの論考を執筆するにあたっては、身体に関する哲守・社会科学における業績を集めた叢書The Body : Critical Concepts in the Social Sciences (Routeledge)が議論を整理する上で非常に有益であった。
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