本研究の目的は、社会における身体的行為の意義を解明するため、「リズム性」の概念を提唱し、新たな方法論を切り開こうとするものであった。この視点から本年度は「社会性とリズム性」をテーマに、社会性の形成と変容における身体性との関係を主題化した。その成果は以下の三つの論文および学会発表に結実した。 1.「機械は作動するか-ドゥルーズ/ガタリにおける機械の問題系」(別記『ドゥルーズ/ガタリの現在』所収)。 本稿は、ドゥルーズとガタリの機械の概念の意義を検討し、この概念が、身体を社会性へと媒介し、その形成と変容を織りなすリズム性に関係することが明らかにした。 2.「エートスの製作としての『生の技法』-フーコーとデリダによる『みずからに死を与える主体』の行為論」(別記『ノイズとダイアローグの共同体』所収)。 本稿は、フーコーとデリダの「死」を廻る省察を検討し、「生」がその技法に支えられながら内的に細分化し、多様な行為として現れてゆく身体的リズムを記述する方法論を提唱する。その際、本研究で今年度購入した叢書Performance (Routeledge)が有益であった。 3.「贈与・瞬間・忘却-『死を与える』をめぐって」(別記日仏哲学会シンポジウム口頭発表)。 本発表においては、デリダの贈与についての省察を「制度化」の問題に結びつけ、贈与の問題系を忘却と記憶の社会的リズム論として練り上げることを目指した。本発表を元にした論文は、日仏哲学会の学会誌『フランス思想・哲学研究』第一三号に今春発表さる(原稿受理済み)。
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