研究課題/領域番号 |
17652011
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金田 千秋 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (80224624)
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研究分担者 |
加藤 哲弘 関西学院大学, 文学部, 教授 (60152724)
前川 修 神戸大学, 文学部, 助教授 (20300254)
日高 健一郎 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (30144215)
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キーワード | 記憶 / 修復 / 現前 / 古色 / 美的 |
研究概要 |
本研究は、ユネスコの世界遺産制度に代表される近年の文化遺産(類比的に自然遺産)保存制度の新たな展開を踏まえ、遺産保存の新たな哲学的/美学的基礎付けを志向するものである。研究代表者(金田千秋)は、20世紀の保存思想の出発点を暫定的にアロイス・リーグルに置き、彼の『記念物崇拝』(1903)の中から(うっすらと19世紀思想の色調を残さぬでもない)一連の哲学的/美学的基本カテゴリーを析出する作業を継続するとともに、研究の進展のなかで、おそらく真の意味で「20世紀的」たるに恥じぬ保存思想の最初の例をチェザレ・ブランディの『修復の理論』(1977)のなかに見いだすに至った。代表研究者は、その研究傾向からして保存や修復の具体論やそれにまつわる行政上の様々な問題よりは、保存/修復行為を可能ならしめそれを舵取りする、人間の意識の「論理構造」に深い関心を寄せるものであるが、荒削りとは言え、ブランディはこうした企てのための充分な材料を提供していると言っても不当ではない。19世紀と20世紀の哲学/美学思想の諸局面を参照しながら、このような理論構築を急ぎつつある。 研究分担者の加藤哲弘は、19世紀後半から20世紀におけるリーグルとその後継者たちに至るウィーン学派の美術史理論について、所有する文献資料を金田に提供するなどして、上記の理論構築に貢献しつつあり、研究分担者の前川修は、ウィーンで開催されたリーグルに関するシンポジウム『アロイス・リーグル1905/2005』に参加して、現代のリーグル評価の動向を報告するとともに、自身のベンヤミン研究の成果を研究代表者に提供するなどして、上記の作業を哲学的側面からサポートしている。研究分担者の日高健一郎は、平成18年度、ヨーロッパにおける世紀末から現代までの約100年間における修復思想と保存政策の変遷をまとめる予定であり、その成果は研究代表者の論文と相補い合って、21世紀の保存/修復思想のあるべき姿を描き出すであろう。
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