当年度の研究は、大きく4つの方向から進められた。 (1)明治以後、昭和30年代までに刊行された日本画技法書および日本画材料商品目録を収集した。有益な資料として技法書13編、商品目録7編を収集し、記載された岩絵具を分類した。これによって、どの年代にどのような新しい岩絵具が市販されていったのかを把握することができた。新しい岩絵具は、明治40年代から市販され始め、大正期には数十色にまで発展していた。 (2)明治以後、昭和30年代までに制作された日本画作品を全国の美術館収蔵品展で観察し、岩絵具の使用状況の把握に努めた。数百点の観察の中から、特徴的な作品約120点について技法を記録し、年代順に整理した。これによって、近代日本画が新しい岩絵具表現を導入していく足取りと、この点における重要作家の絞込みができた。横山大観筆「山路」(明治45年)が端緒であると推定し、平成18年度春に「山路」および関連作品の熟覧を予定している。 (3)京都の岩絵具メーカーおよび老舗の小売店を回って、戦前の岩絵具の開発・販売状況についての聞き取り調査をした。新岩絵具開発を行った中心的な日本画家と技術者を特定するためであったが、日本画、陶芸をはじめ各種の工芸技術者が一都市に共存する京都にあっては、釉薬から人造岩絵具を製造することは身近な技術応用であることがわかり、開発者の特定という方向を改める結果となった。 (4)日本画をめぐる国際的な視点としては、8月に研究関連事業として韓国画と日本画の学生による滞在制作および韓国画教員を招聘してのシンポジウムを遂行し、より深い日韓の実態比較調査ができた。さらに、10月に訪韓。ソウルの大学、美術館、画廊、画材店を実施調査した。 ※平成17年度の中国実地調査は延期し、平成18年度に行うこととした。
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