平成17年度は分析資料の検討と資料採集方法についての基礎的な検討を行った。 まず、これまでなされてきた熱ルミネッセンスの研究報告書をもとに、陶磁器の制作年代の測定が、どの程度まで精度があるのかについて調査を行った。 その結果、測定機関によってばらつきがあることがわかった。また、これらの報告書の測定のサンプルが多様であり、唐時代の陶磁器のサンプルについて精度の比較検討するほどの研究はなされていなかった。 平成18年度に本格的に分析を開始する唐三彩の分析サンプルの妥当性の検討がまず必要であり、国内にあるサンプルについて、真贋についても美術史的な観点を含め、さまざまな角度から検討を加えた。これまでに、陶磁器についておこなわれた熱ルミネッセンス法による論文を検討すると、分析の方法論よりも、まず、サンプル採取の手順の確立が重要であることが分かった。陶磁器のどの部分からどのような方法で、サンプルを採集しているのかは、各研究機関によって異なっている。現在は陶磁器の芸術的価値を損なわないことを前提にした採取方法で、その結果、年代測定の精度が高くない可能性がある。本研究では精度を高めるためのサンプル採取であり、陶片資料によって、十分な量の熱ルミネッセンスの資料を採集することにした。通常サンプル採取については、分析専門の機関が指定した専門家、あるいは分析者によりなされる。しかし、本研究は萌芽的な研究であるので、研究者自身で採取方法を検討するため、サンプル採取用工具を購入した。 また平成18年度に、中国河南省鄭州市で河南省考古研究所が発掘した唐三彩の調査を実施するための準備をおこなった。この唐三彩は出土地や制作年代が限定されたものであり、この唐三彩を分析できれば、熱ルミネッセンスによる陶磁器の年代測定について、かなり有効なデータが得られると期待されることが分かった。
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