唐三彩の窯跡出土陶片を熱ルミネッセンス法によって、分析するために、下記日程により河南省鄭州市、鞏義市、洛陽市において、研究者との意見交換、調査および必要なサンプルの収集をおこなった。 平成18年7月20日河南省鄭州市の河南省考古研究所を訪問し、孫新民所長および唐三彩の発掘担当者であった郭木林氏と面会し、唐三彩に関しての意見交換を行った。また、2002年度に河南省考古研究所が発掘した窯址出土資料を調査し、熱ルミネッセンス法の分析に必要な量である数グラムの資料の提供を河南省考古研究所より受けた。 河南省考古研究所に保管されている唐三彩の出土陶片以外に、唐三彩周囲の資料の放射線量に関する情報が必要であることから、7月21日に河南省鞏義市にある唐三彩の中心的な窯である黄冶窯において、河南省考古研究所の了解のもと、唐三彩が出土した周辺から数グラムのサンプルの収集を行った。また7月22日には洛陽市博物館において、唐三彩の墓葬出土品の調査をおこなった。 これまで、唐三彩の窯址出土陶片を熱ルミネッセンス法によって分析されたことはなく、貴重な情報を得ることができた。唐三彩の正確な年代測定をするためには、唐三彩そのものの蓄積線量を測定するだけではなく、唐三彩が置かれた年間線量に関する情報が必要である。蓄積線量を年間線量で割り算することによって、焼成後の経過年数が導かれる。唐三彩の制作年代については紀年のある墓葬からの出土品によって、7世紀後半から8世紀前半までの中で、かなり明確になってきている。この年代観と熱ルミネッセンスによる年代観が一致することから、熱ルミネッセンス法による年代測定が有効であることが分かった。
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