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2006 年度 実績報告書

和歌の思想・言説と東北地方における芸能文書との影響・交流についての研究

研究課題

研究課題/領域番号 17652020
研究機関新潟大学

研究代表者

錦 仁  新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00125733)

研究分担者 前田 雅之  東京家政学院大学, 人文学部, 教授 (00209389)
渡部 泰明  東京大学, 人文社会科学系, 助教授 (60191813)
キーワード芸能文書 / 和歌の思想・言説 / 藩主の和歌活動 / 藩主の領内巡覧記 / 地誌作成 / 歌枕・名所の整備・保存
研究概要

本年度は当初の計画通り宮城県と岩手県を調査したが、調査資料の対象を拡大し、地方の芸能文書のほかに同じく地方の和歌文書についても資料収集し研究を行った。また、秋田県立図書館でも同様の資料収集を行った。
岩手県立図書館では、平泉町の毛越寺などで行われていた能の台本の調査をし、その中に小野小町、小野篁、藤原定家を主人公とする地方色の濃い謡曲が存在することを見出した。「小町」(卒都婆小町)は、現在の「卒都婆小町」の原曲と見られ、検討の結果、小町説話の生成プロセスに関する従来の研究に新見を加えることのできるものであることがわかった。
秋田県立図書館では、九代藩主佐竹義和の領内巡覧記およびそれに関連する古文書を多数見出した。そして、それらの解読を通して、<和歌を詠みながら領内を巡覧する藩主>という概念を立てて、江戸期の和歌と地誌との関係を解明すべきことがわかった。秋田には菅江真澄の書いた数多くの地誌があるが、それらはすべて<常民のために常民の生活を記録したもの>という柳田国男以来の民俗学の観点から理解されてきたが、大きな間違いがあることがわかった。真澄の地誌は、和歌・俳譜・漢詩等の記事が多く、佐竹氏以前の統治者である小野寺氏と地元に居残ったその旧臣たちに関する記事が多く、かつ小野寺氏が祀った八幡神社および八幡太郎義家伝承を極めて重視して書いている。佐竹氏が先祖を新羅三郎義光から八幡太郎義家へと変更したことなどを勘案すれば、真澄の地誌は秋田藩の意向を反映して書かれたことがわかる。とりわけ、和歌を詠みつつ領内を巡覧する藩主義和が旅日記に書き記した関心事と真澄が地誌に書いた内容が重なることが注目される。
宮城県立図書館では、上記と同様な観点から仙台藩(五代)伊達吉村の著作と関連資料を収集し検討した。その結果、同じことが言えることがわかった。とりわけ、藩主の詠歌行為、領内巡覧、歌枕遺跡の新設・整備・保存、地誌・名所図絵の作成、これらが緊密に関連していることが明瞭になった。
芸能文書における和歌の思想・言説と併行して、さらに藩主の詠歌・領内巡覧・紀行文・歌枕・地誌などの問題も付加して、所期の研究目的を遂行し、成果をあげつつあることを報告する。

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公開日: 2008-05-08   更新日: 2016-04-21  

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