研究概要 |
本研究は,ローカル放送局が制作するニュースが,地域のイデオロギーの管理(形成・維持・再生産・強化など)にいかに関与しているかについて,ニュースの取りあげ方や伝え方などを,言語面を中心に,映像音声の各側面を加えて分析する番組制作の質的側面と,番組全体の構成の中で地域のイデオロギーに関わる内容・要素が占める割合等に関する量的側面の両方から追求することをおもな目的としている。2年目の今年は,次のような研究を行った。(1)鹿児島のローカル局ニュースの特性を追求するために,福岡,熊本,鹿児島の3カ所で,同日のTBS系列ローカル局(RKB, RKK, MBC)テレビニュースを1ヶ月にわたりDVDに録画して収集,(2)この録画資料を,マルチモーダルな視点からの分析が可能なように,言語面だけでなく映像やテロップ等のその他のニュースの構成要素全体を整理した電子ファイル資料の作成,(3)鹿児島の3つのローカル局間でニュース放送に違いがないかを調べるため,同日のニュースを1ヶ月にわたりDVDに録画して収集(4)第1回「言語変異と社会言語学」研究会,および第18回社会言語科学会研究大会のワークショップにおいて,成果の一部を発表した。 この研究の着想を得た3年前にくらべると,鹿児島のローカル色を前面に押し出した情報そのものは放送されることが少なくなったように感じていたが,上記(1),(2)の結果を見ると,ニュースの構成等には地域間でいくつか異なる点が見られるようである。どのような点が異なるか,イデオロギー形成とどのように関わるかは,次年度以降量的,質的側面から検証したいと考えている。(3)については,まだ資料化が終わっていない。これも次年度の課題である。また,19年度は選挙の年でもあるので,選挙報道と地域イデオロギーの関連を調べるために,ニュース放送等の録画資料収集を始めた。
|