本年度(平成17年度)は、研究協力者(中学英語教師)の教育実践の全体像、言語教育的原理、コミュニケーション教育的原理、教師としての教育信念形成のあらましをつかむ目的で、主として以下の通り実施した。 (1)教師への聞き取り調査研究の方法論的留意点を、第二研究分担者が、その分野の権威である山崎準二氏(静岡大学教授)より、本研究に即した形で具体的に教示を受けた。その結果、(a)研究協力者のライフヒストリーをまるごと、そのまま聞き取る、(b)子どもの頃から始めて、これまでを聞き取っていく、(c)教師としての「実践史」を把握することが一番大事、(d)ライフヒストリー・アプローチでは、「実践の変化」のターニング・ポイントを捉えること、などの重要性を学んだ。 (2)以上の留意点を踏まえて、第一回の聞き取り調査を行った。役割分担は、第二研究分担者が教師のライフヒストリーの観点から通時的に聞き出し、その過程で必要と思われたときに、研究代表者が言語コミュニケーション力論的観点から、第一研究分担者が言語学的観点から、質問を加えた。聞き取った具体的内容の公開に関しては、プライバシー・人権に留意する必要があるため詳細は最終年度(平成19年度)の報告書に任せるが、研究協力者の諸信念形成を、基本的に通時順の詳細なエピソードから学ぶことができた。 (3)第二回の聞き取り調査を行い、第一回調査の聞き取りの書き起こしを読むことで生じた疑問を解明することを試みた。加えて、第一回では語り残していたエピソードも聞き取り、本年度の目的であった聞き取り調査を終えた。 以上の結果を踏まえ、二年度となる平成18年度は、研究協力者の勤務校での観察調査を行い、ある中学英語教師のケーススタディ的な調査による個性記述を経て、英語教師の成長に関する洞察をさらに深めることを目指す。
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