地図作製に関する政府機関として知られてきた陸地測量部が、単に地形図等の公的地図作製にとどまらず、それに関わる写真撮影や化学材料に関する研究でも重要な役割を果たしてきたことを明らかにすべく史料の収集に努めた。既に閲覧していた『陸地測量部沿革誌』はもとより、予定通り国立公文書館、防衛庁防衛研究所等の公文書館施設での文書調査、および継承機関である国土地理院図書室の調査も実施した。しかし、予想以上に残存史料は少なく、特に国土地理院での調査ではほとんど収穫らしい収穫を得ることができなかった。但し、陸地測量部の所蔵文書が第二次世界大戦中の疎開時の輸送中に空襲で焼失したらしいことは突き止められた。また、防衛研究所の旧陸軍省文書でも写真班の活動自体を明らかにできる文書は非常に限定されており、調査においてもやや幅を広げて写真関係ということで史料収集を行った。そのように活動内容そのものに関わる成果は少なかったが、写真班の活動成果は「日露戦争写真帖」を中心に一定の成果をあげることができた。今後は、それら成果物の分析から活動内容を明らかにする研究を展開してゆくことが中心にならざるをえないであろう。 もっとも、より幅広く写真帖に関する研究は、分担者として参加している画像資料に関する研究ともリンクさせながら一定の成果を収めており、本年度もそれに関わる口頭発表を3本行うことができた。次年度にはこれらの口頭発表をもとに論文や著書として公刊できるようさらなる研鑽を進める予定である。また、陸地測量部の活動についても、一次史料の活用には制約を逃れがたいとしても、二次史料を活用しつつ内容の一端でも明らかにしたいと考えている。
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