研究概要 |
本研究では江戸時代の小袖姿の女性の体形と着衣形態を定量化し,長期間にわたる時代変化の分析を行った.対象としたのは17世紀初期から20世紀の直前までの浮世絵作品である.概要は以下の3点にまとめられる. 1.浮世絵に描かれた立位の着衣女性像から体形を推定し描出する手法を開発した.これは実際の人物像によるポーズと標準立位姿勢の間のサイズ比を用いて,人物像から17種類のサイズを推定することができる.この方法は人類学における各種計測項目が採取できるため現実の女性の体形との相互比較が可能である.そして開発した手法を用いて浮世絵と明治時代の写真に適用し,絵画分析の新しい手法として提案した. 2.江戸時代から明治時代に至る300年間の浮世絵に描かれた立位女性像の体形サイズの変化を分析し,各時期と作者にサイズ上の特徴が存在することを明らかにした.また浮世絵の総体的な体形は肩幅が狭くヒップ幅も小さい為に胴部のくびれが少ないこと,胸部からウエストまでの距離が長い特徴であることが判明した. 3.小袖着衣形態についても定量化を試み,それが各時期に実際に着用された小袖のサイズとよく対応すること示した.また体形との相関関係を分析することで浮世絵の着衣形態が体形と深く関連して描かれていることを確認した.
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