(1)概況 17年度は個人情報保護法ならびに行政個人情報保護法が施行される最初の年度であったため、運用状況の観察と制度の基礎の考察に費やした。運用においてはいわゆる「過剰反応」が指摘され、制度趣旨があいまいなままに第三者提供の原則禁止などの制度の表象だけが一人歩きていることが問題とされるに至っている。本研究の見立てである、本人開示といった本人のイニシアティブにかかる個人情報保護制度には限界があり、それよりも情報管理の構造的適正さを担保するための客観的装置が必要である、という仮説にとっては、上記の「過剰反応」は中立的な現象であるものの、人々の運用に対する関心が機関内部における個人情報の管理ならびに使い回しにあることが確認されたとはいいうると思われる。 (2)活動実績 17年度はおおむね当初の予定どおり、資料収集と出張による取材・意見交換等に予算と時間を費やした。社会学のシンボリック相互行為論を応用したプライバシー権論を、個人情報保護法や監視カメラなどといった現実の諸施策との整合性ないし緊張関係のなかで考え直した。その成果の一端として、下記の雑誌論文のほか、学術講演「監視カメラの憲法問題」社団法人自由人権協会シンポジウム(2005年12月13日・於早稲田大学)、学術講演「憲法学における自由と安全」(2006年1月17日・於北海道大学大学院法学研究科『法形成論』シリーズ)などの実績をあげることが出来た。また、下記の図書(単著)の改訂に際して、本研究で得た知見を反映することができた。さらに、韓国ソウル大学で開催されたAsian Forum for Constitutional Law(2005年9月22日〜25日)に参加し、プラバシー権の我が国での状況を含む学術講演を行い、アジア諸国の憲法研究者と意見交換の機会をもった。
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