研究2年目として、初年度の課題、1非政府機関の実態調査、2.公共財と公共サービスのリスト作り、3.理論モデルの構築を継続するとともに、新しく、4.非政府機関相互の調整を加えた。以下、事例研究と国際学会についてまとめる。 (1)非政府機関相互の調整の事例研究:新潟県中越地震 2005年6月20日に発生した大規模地震を事例に、中央政府、地方政府、各種援助団体、ボランティアがどのように連絡調整をとったかを調査し、問題点を明らかにした。実際に(i)ボランティアとして参加した本学学生、(ii)自衛隊の災害派遣を指揮した元自衛隊陸佐からも聞き取りを行った。指揮官からは、他の政府機関との連携の難しさ、非政府機関との協力体制の困難さの指摘があった。現場の復旧作業参加者の問に危機管理の意識・知識・技能に差があることも明らかになった。これに新潟県の資料等を加えて、市場メカニズムの機能しないところでの物資の最適な配分のあり方を検討中である。 (2)国際学会出席:Institute of International Public Finance(IIPF) 8月にキプロス共和国で開催された第61回IIPF Public Finance : Fifty years of the second best-and beyondに出席し、社会資本をめぐる諸問題のSessionにおいてChairを務め、2本の論文にコメントした。さらに本研究課題に関連するテーマの報告者等と討議を行ない、新たな知己を得、研究の方向性や学問的刺激を得た。とくに、本研究とはちょうど逆のケースであるが、公共による私的財の最適供給を論じるGrecoの報告"The Optimal Public Provision of Productive Private Goods"は有益であった。
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