平成17年度から3年間にわたり実施されてきた本研究は、社会福祉及びソーシャルワーク実践と社会開発との関わりに焦点を当て、国内の地域福祉やソーシャルワークの新たな枠組み及び福祉専門職の社会開発への役割の解明を目的としている。平成19年6月12日から18日まで、中国北京の中国青年政治学院社会工作学院において日本のソーシャルワーク及び高齢介護に関する講演を行うと伴に、中国における今後のソーシャルワーク実践と社会開発との関わり方について教育者・実践者やアメリカからの福祉研究者も交えて開発とソーシャルワーク実践に関する協議を行った。平成20年1月には共同研究者でもある米国デンバー大学老年研究所長と米国NGOのソーシャルワーカーで現在グアテマラにおける農村貧困削減や女性の自立支援を行っている実践者へ本研究課題に関する聞き取り調査を行った。これまでの調査から、福祉援助技術の中でも特にコミュニティワークの重要性が明確になり、社会開発との共通点・相違点が明らかになってきた。エンパワーメント志向型のソーシャルワークは、先進国や開発途上国を問わず、地域における多様な問題を抱えるコミュニティを対象とした実践モデルとして大きな意義が確認された。また、コミュニティワークと高齢者介護・介護保険の課題について、11月に韓国ソウル市Sungkyunkwan Universityで口頭発表を行った。平成20年1月には福岡アジア都市研究所主催で「高齢者の住みやすい地域コミュニティを考える」セミナーにおいて、コミュニティワークの重要性及び地域での取り組みに関して検討した。研究成果として、前年度からの研究成果の一部を『世界の社会福祉年鑑2007』において、「アメリカのソーシャルワーク」及び「ICSDアジア太平洋支部会議」と題する論文にまとめた。更に、3月には「高齢者ケアを基盤としたコミュニティ形成:エンパワーメント・モデルとソーシャルワーク実践の課題」が『都市政策研究』に掲載された。
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