平成17年度は、被虐待児童の回復に寄与する要因を探索的に研究した。全国児童養護施設の各地域ブロックから1箇所ずつ選択し、園長並びに被虐待児を担当する職員に調査を行った。施設には、「ここ1年間に変化したと思われる事例並びに変化がなかなか起こらない事例」をあらかじめ選出していくよう依頼し、各事例の転機について半構造化された面接法で質問を行った。 結果、5施設の協力が得られ、変化事例が8、変化が起こらない困難事例が5事例収集できた。年齢としては、6歳から17歳と年齢に幅があるが、13事例のうち、前思春期にあると思われる6歳から12歳までが9事例であった。性別としては、女子8名、男子5名であった。 よい変化を起こした転機にあったものは、職員自身の受け止めである。ここでいう受け止めとは、子ども自身の問題行動のなかに変化の可能性を見て取り、その支援を意味する場合が多かった。逆に、困難事例は、その受け止めそのものに困難があった場合である。特に、親子関係が安定的ではなく、親が子どもを施設入所後も否定し続ける場合や子どもを引き取るといいながら引き取らないといった「いい加減な態度」のなか、子ども自身の不安定さとそれにともなう行動化がエスカレートするなかで受け止めが困難になるといった過程をたどっていた。 このことから、職員の受け止めとは何かをさらに探求し、それを可能にするものとは何か、また親と子の関係を安定させていくためのアプローチを明確にしていくことが今後の研究課題である。
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