18年度においては、17年度に調査をさせていただいた施設に再度訪問し、調査を行った。加えて、17年度調査が比較的都市部における施設調査であったため、本年度は、地方都市の児童養護施設3箇所を追加して同様の調査を行った。また、インタビューによるデータ収集では一定の限界があると判断し、参与観察による調査を別途行った。具体的な調査項目として、18年度の調査においては、被虐待児の施設生活における被虐待の影響がどのような生活のしづらさとして反映されるのか、職員はその場面においていかに関わっているのか、そこに焦点をあて、データ収集を行った。それは、被虐待児の生活のしづらさに対する日常場面の関わりが、回復への転機となると考えたためである。 結果として、インタビューおよび参加観察において得られた生活のしづらさとしては、自分の行動の非を自分で認められず、他罰的になることがあることがわかってきた。しかも、この生活のしづらさは、連続的であり、かつ執拗でなかなか変化がみられなという特性をもっている。したがって、職員は、この行動に疲弊し、困惑しているのが現状である。 こうした被虐待児の否定的な行動場面は、これを日常的に受けとめていくことが被虐待児の回復につながっていくといえる。だが、えてしてこの生活のしづらさゆえに、職員はしづらさにのみ関わりの焦点があたり、このことが逆に、生活のしづらさを強化してしまうような場合があることがみえてきた。逆に、通常問題行動に至るパターンではない行動を被虐待児が行った際に、職員が介入を行うことが、行動の変化に至る可能性も垣間見られた。今後、被虐待児の回復支援においては、この施設における日常性をいかに捉えるかが重要であると考える。
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