研究課題
ジャーナリストに対する惨事ストレス対策の現況を把握するために、文献研究とジャーナリストへの補足的聴取、海外調査を行った。文献研究では主に、目本におけるマス・メディア論やジャーナリズム研究の領域における先行研究を概観したどころ、日本ではジャーナリストの「職務ストレス」は比較的早くから認識されていたのに対し,「惨事ストレス」は報道機関が大災害に巻き込まれる出来事を契機に関心が高まっていることなどが明らかになった。海外調査では、ダートセンター(Dart Center)関係者に対する面接が行われ、以下の情報を得た。ダートセンターは、惨事ストレスに関わる情報を提供していた。具体的には、WEB・資料・フェローシップアワードによる啓発と教育によって、各記者の所属組織における倫理的配慮と記者自身のストレス対策を促すことを意図している。現時点では、ジャーナリストのストレスに関する確固たるケアシステムはない。アメリカや関連諸国においても、記者自身が明白な「ケアの受け手」になることへの抵抗が強く、記者たちは医療やカウンセリングより、報道組織内で、よい先輩記者やよい上司(編集者)がストレス軽減に果たす役割を重視している。したがって、記者を「ケアされる存在」として捉えるシステムではなく、「記者としてよりよい仕事をする」ために役立つものとして、ジャーナリストの価値観に沿った惨事ストレスケアシステムを構築することが必要である。日本においてジャーナリストのシステムを構築する際には、上司や編集者の役割に注目しつつ、日本での実態を把握し、社会文化的諸事情を踏まえた現実的な対策を考えるべきである。以上の意見を聴取し、今後の協力体制について相談がなされた。
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筑波大学心理学研究 33
ページ: 29-41
東洋大学21世紀ヒューマン・インタラクション・リサーチ・センター研究年報 4
ページ: 1-33
東洋大学21世紀ヒューマン・インタラクション・リサーチ・センター研究年報 3
ページ: 71-76