研究概要 |
本研究では,「保育園」と「家庭」という2つのシステムに注目し,その間を往復する子どもが,その場面移行に伴ってどのような行動の調整を行いつつそれに適応しているかを,いわゆる「基本的生活習慣」と従来よばれてきたものの獲得過程における養育者と子どもの葛藤や支援・協力などの実態を手がかりに検討することを目的とした。 今年度の研究実績として、以下の二点が挙げられる。 1.家庭と保育園における横断研究 11〜28か月までの保育園児25名を対象に、家庭と保育園の定常場面における子どもの「泣き」と食事場面における「拒否」「泣き」「制止」行動などについて比較検討した。その結果、定常場面における「泣き」、食事場面における「拒否」の出現回数は、保育園よりも家庭で多く、泣きや拒否の理由やそれに対するおとなの対応も保育園と家庭で異なることがわかった。泣き・拒否というネガティブな子どもの行動を手がかりとすることによって、家庭と保育園が質的に異なる文脈をもったシステムであることを明らかにした。 2.保育園における縦断研究 9か月から36か月齢の子ども12名と担当保育士を対象に、定常・食事場面における養育者と子どもの対立と調整のやりとりの発達的変化について検討した。その結果、子どもの拒否行動は、食べるか・食べないかをめぐる刹那的な拒否から、自己と他者の要求を対比した拒否へ、さらに、食事の文脈を考慮した拒否へと変化することが示唆された。また、拒否行動に対する保育士の対処行動は、繰り返し促したり、異なる食べ物の提供すること(9か月から15か月ごろまで)、他者の視線を強調したり、他児から食べさせてもらう、食べ物に新たな意味を付与すること(18か月から30か月ごろまで)へと変化し、さらに、マナーや食べる順序に関する説明や交渉(30か月から36か月)へと変化することが示唆された。
|