研究課題/領域番号 |
17653083
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研究機関 | 神戸親和女子大学 |
研究代表者 |
末田 啓二 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (30216270)
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研究分担者 |
酒井 敦子 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (70205699)
菊池 信子 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (00204834)
丸山 総一郎 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (70219567)
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キーワード | 教示行動 / 高齢者 / 心理的適応 / 社会的態度・行動 / フィールド研究 |
研究概要 |
高齢者の「教える・伝える」という行為(ここでは教示行動と呼ぶ)が高齢者自身の心理的適応や社会的態度・行動にどのような影響を及ぼすかを検討すると共に、高齢者の教示行動を誘発するための面接プログラムの開発を目的とする。 本年度は初年度に当たり、面接場面で生じる高齢者の教示行動が主観的幸福感や自尊感情など、高齢者の心理的適応を向上させる効果が認められるかを以下の手続きに基づき実証的に検討した。 被験者:65〜80歳の在宅健常高齢者。実験群、対照群それぞれ30名、男女ほぼ同数。 心理的適応の測度:PGCモラールスケール、GHQ,自尊感情尺度、CES-Dその他。 教示課題:昔の遊び・玩具、戦時中の生活、童謡その他。なお現具や写真パネルなど実物を提示 面接者:心理学系の大学4年生および大学院生、全員女性 面接内容・期間:実験群は毎週2時間(2セッション)、各セッション1つの教示課題が提示される。計6週間の面接。面接初期と最終面接時に、同一の質問紙調査(GHQなど)を2回実施。さらに3ヶ月後に、効果の持続性の確認を意図して、再度同一の質問紙調査を実施した。対照群は教示課題に基づく面接が無く、実験群と同時期に2回の同一の質問紙調査を実施した。 1回目と二回目の質問紙調査の得点の変化に関しては、両群ともGHQ合計点以外は有意な得点変化が認められず、この結果からは実験群に面接効果(教示行動による効果)が生じたとは言えなかった。各尺度得点は有意差を生じるほどの得点変化は認められないが、全体的に心理的適応の増加傾向の方向に得点変化が生じた。また実験群ではPGCモラールスケールと自己効力感の2つの尺度で性差が見られ、いずれも3回目(3ヶ月後に実施)のみ男性の方が女性より高得点であった。その理由は男性の方が面接効果の持続性が高く、そのため追跡調査段階で性差が生じたものと考えられる。 以上より統計分析では面接効果が認められなかったが、最終面接時に実施した教示行動経験に関する質問紙の回答では、大半の被験者は面接により心理的適応を増大したことが示唆された。
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