研究概要 |
平成18年度は、現実世界で生ずる出来事と映像世界で生ずる出来事の関係を子どもがどのように理解しているかを明らかにできるような映像条件を探り、そうした映像を作成して次のような実験を行った。すなわち、(1)現実世界では起こりえるが映像世界では起こりえない出来事について間う課題(例:現実世界では積み木の塔の載っている机を揺らせば積み木が倒れるが、映像世界では、積み木の塔の映ったテレビを揺らしても積み木は倒れない等々)、(2)現実の世界では起こりえないが映像世界では起こりえる出来事について間う課題(例:テレビに映っていた人形はフェイドアウトして消えるが、現実ではこのようなことはおこらない等々)を実施し、幼児が現実世界と映像世界をどのように区別しているかを探った。また、(1)については、本来映像世界では起こりえない出来事が起こってしまう映像をトリックによって作り、それを与えた場合に子どもがどのような反応をするかも併せて調べた。その結果、3歳児は4,5歳児と比べて映像世界と現実世界の区別があいまいであること、4,5歳児では現実不可能事象の理解よりも映像不可能事象の理解が劣ること、などが明らかとなった。 平成18年度はまた、既に実験実施済のデータを論文にすることにも力をそそいぎ、それらは発達心理学研究掲載論文、愛知県立大学文学部論集(児童教育学科編)掲載論文として結実した。前者の論文の内容は、研究協力者が連名で平成18年9月にイギリス発達心理学会においても研究発表を行い、表象発達研究では世界的に著名なJosef Perner博土からも好意的なコメントを得ることができた。さらに、映像の表象性理解を含む幼児期の表象発達について理論的な整理の試みにも着手し、11月の日本心理学会第70回大会においてその理論モデルを提起した。
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