昨年度に行なった基礎的作業にたったうえで、今年度は、いくつかの自治体で実施された学力実態調査のデータを計量的に分析することを通じて習熟度別指導の効果を見出すことを試みた。 使用したデータは、1)大阪府のもの、2)尼崎市のもの、の2つであり、分析の視点としては、教育的に不利な環境のもとになると思われる集団の基礎学力の底上げという観点を重視する「効果のある学校」(effective school)論を採用した。 まず、大阪府のデータは、2006年5月に実施された小・中学生(小6と中3)に対する大規模な学力実態調査である。全体で10万人以上が参加したこの調査では、サンプリングを行ない、約1万ケースからなる、小6と中3の2つのデータセットが作成されている。そのデータの分析を通じて以上のようなことが明らかになった。すなわち、1)子ども達の学力は、3年前と比べても低下しており、格差も拡大している、2)その中で、格差の拡大を押しとどめている学校も、少数であるが見出された、3)また習熟度別指導は、主として算数・数学科で実施されており、子どもたちの学力を引き上げる上で。一定の効果を有していることが判明した。 次に、尼崎市のデータは、これも5〜6000サンプルからなるデータセットが作成された。また、2004年と2005年度の調査のデータもあわせて参照することができたので、経年比較も行なった。その結果見出されたものは、以下のようなことがらである。1)尼崎市の子ども達の学力は、全学年の全教科で、全国平均を下回っている、2)しかしその中で、一部の学校では継続して良好な成績を収めている、3)習熟度別指導についても、中学校の数学においてその効果が見出された。 以上の知見をふまえ、最終年度となる19年度には、分析手法を工夫し、さらにつっこんだ分析検討を行ないたい。
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