本研究は、東アフリカ3ヵ国(ケニア、タンザニア、エチオピア)の研究者とともに、教育セクターの開発目標として国際社会で合意、採択されているEducation for All(EFA)が、途上国の教育政策に実際に取り込まれ、内部化されていく過程において、どのような変容、適応を果たしているかを国ごとに比較分析することを目的としている。平成17年度は初年度であったため、まず、3ヵ国比較調査の基礎として、調査フレームワーク、調査課題、インタビューの質問リストなどを3ヵ国の研究者と詳細に議論し、共有化を図った。予算の制約もあり、今年度はケニアでの調査を中心に行い、タンザニア、エチオピアでは、試行的にインタビューを行い、本調査は次年度以降に持ち越すこととした。 ケニアで行ったインタビュー調査では、「万人に教育を与える」という発想自体は新しくない、という発言が多く聞かれた。本調査では、そのように元来その国にある「万人のための教育」理念に、EFA開発目標がどのように当てはめられるのか、教育政策や実施の変容がどの程度外生的要因によってもたらされ、どの程度固有の制度や文化、歴史によって既定されるのかを分析している。調査の結果、Education for allという概念自体は新しくないが、達成目標を設定して、達成度の測定を行って国際的評価がなされること、これまでと違う資金援助方法が持ち込まれたことがEFAの新しさだという反応が多かった。しかし、EFA開発目標の達成度を報告書に纏めたり、援助機関の資金援助の受け入れ窓口になっている人々は教育省の中でも一部で、それ以外の人々にとって、教育行政の実施は、EFA開発目標導入前と後で大きな違いはないとの声も聞かれた。 来年度以降は、分析の精緻化を図るとともに、調査結果を発表していくことも積極的に検討したい。
|