研究概要 |
2年間の継続研究における1年目の研究目的は、小・中学校の理科授業における教授(=教え)の実態を収集し、今日的な視点から教師の支援のあり方の特徴を抽出することであった。このように授業記録を収集することが中心である1年目であったので、明確な結果を見出せる段階にまで至ってはいない。だが、収集した授業記録から、教師の支援行為の一端が明らかになってきている。 これまでの調査で明らかになった理科授業における教師の関わりには次の4点があり、またそのような支援が必要である可能性が高いことが、現時点で考えられるということである。ただし、以下に示す支援行為は、実験・観察等を実施した後の、いわゆる「まとめ」までの場面における教師の支援行為であり、小学校の授業について言えることである。4つの要素は、以下に示すとおりである。 ア.クラス内で共有されている、事象に対する子ども固有の表現(「社会的言語」化した言葉など)に着目し、子どもと事象との接点とその特徴を見出そうとすること。 イ.子どもの気づきや固有の表現に対して、一貫して科学の視点から繰り返し関わろうとする(語ろうとする)こと。 ウ.発達の最近接領域(ZPD)を確信して行われる「科学用語」や「理論、法則」の、子どもへの提示 エ.学習した科学用語や理論等で適用事例を解釈するような要請と、それによる思考の文脈の拡張を目指した言葉かけ これら4つの教授行為は、昨今注目されているLave, J.ら(1993)の「正統的周辺参加論」であるとか、Rogoff, B.(1995)の「導かれながらの参加-専有」としての学習論を支持する関わりと見ることができる点できわめて興味深い。この事は、伝統的な教授スタイルと目されてきた「指導」の姿ではなく、子どもの考えを創り支える今日的な「支援」の姿、すなわち、今日的な教授行為ととらえることができる。 今年度は、上述したように、教授行為のいくつかの特徴を明らかにすることができたが、理科授業全体を通しての明確化は、さらなる詳細な分析を待たなければならない。先の要素とは異なる別の要素の存在を検討すべく分析を進めると共に、それらの要素の汎用性(実践可能性)を検証することが次年度の課題となるであろう。
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