本研究の目的は、すでに初等・中等教育の現場で個別におこなわれている実践の体系化をおこなうことである。そのために、まずいのちの教育の実態を調査することを主な内容として本年度の研究を推進してきた。 わが国の小中学校でのいのちの教育について、これまでにも学校別あるいは学級別の事例報告は数多くなされており、また市町村単位での地域の学校での実態調査は散見できるが、全国的な規模で調査したものはない。一方、いのちの教育あるいはデス・エデュケーションの先進国である欧米での実態についても、きわめて部分的に報告が見られるのみである。 いのちの意識調査を、中学生・高校生・大学生および教員の合計485名を対象として実施した。調査結果は多重比較や因子分析を用いて分析し、いのちのイメージとして「希少性」「関係性」「必然性」が得られ、各世代においてそれぞれ違いがあることが明らかとなった。 またわが国における実態については、無作為抽出した全国の小中学校それぞれ500校を対象として、「いのちの教育に関する実態調査票」を郵送法で実施した。集計と分析については次年度にわたって行う予定である。 一方、欧米のいのちの教育の実態としてイギリス、カナダ、フィンランドの三カ国を訪問して、研究者や教育者から情報を得ること、小・中学校での授業の実際を視察すること、カリキュラムや教科書などの具体的な資料を入手することを主眼とした。
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