1.「いのちの教育」に関する全国の小・中学校を対象とした実態調査(昨年度実施済み)の結果を分析し、日本学校保健学会第53回大会(高松市)において発表した。主な結果は以下の4点である。 (1)「いのちの教育」に関連する内容の活動は、小・中学校ともに幅広く行われており、学校種別間で有意差のあった活動は野外生活の体験など3項目だけで、その差は少ない。 (2)教育活動の枠組みとしては、特別活動が小・中学校とも6割前後となっている。小・中学校とも、学期内での集中実施が2割強で、定期的に実施している学校はさらに少ない現状である。 (3)内容的には「いのちの教育」と考えられても、特別な名称を用いていない場合が多い。なんらかの呼称としては、いのちの教育が小学校7.4%、中学校4.9%と、もっとも多かった。 (4)さまざまな活動は、2年以上前から開始されている場合が多い。小学校で71.9%、中学校で56.1%が実施計画が「ある」と回答しており、こうした活動が増える可能性が示唆されている。 2.外国での「いのちの教育」の実態を調査した。昨年度に続き、フィンランドのオウル市を訪問し、小学校3校と中学校1校を見学し、教員との懇談、児童・生徒と交流し、さらに自尊感情について調査をおこなった。この調査は、カナダと日本でも同時に実施している。「いのちの教育」の大きな目的の一つは、児童・生徒の自尊感情を確かなものにすることにあると考えられる。各国での教育の実態と自尊感情の関連を明らかにすることは、「いのちの教育」プログラムの作成において、重要な示唆を与えると考えられる。結果の分析・考察は次年度におこなう。
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