今年度の目標は、イギリスにおいて、Irlen Syndromeのある子どもに対して色眼鏡をフィッティングする診断士の資格をとってくることと、日本人の健常者と読み書き障害のある子どもに対する色の効果を調べることであった。前者の資格については、渡英し、2005年11月14日から11月25日までの間で一定の授業とインターン研修を行い、診断士の資格を取ってきた。一方では、以下の2つの研究を行った。 研究1:色シートのある場合とない場合で単語の指さし課題で指さしの速さに影響があるかを健常者20名(17〜57歳:平均40.0歳)に対して行った。また日本人の好みの色は何かを紫(Purple)、ローズ色(Rose)、黄色(Yellow)、水色(Turquoise)、ピーチ色(Peach)、橙色(Goldenrod)、灰色(Gray)、緑(Green)、青灰色(Blue-Gray)の9種類の中から、健常者50名に対して聞いた。その結果、色シートなし、色シートあり、色シートなしの3条件において、オランダ語単語の指さし課題を行ったときのそれぞれ3回の反応時間を足した数値の平均値は以下の通りであった。なお、計測時間は秒単位なので、有効数字は小数点第1位までとした。 ・色シートなし:17.2±18.0(SD)秒 ・色シートあり:11.9±6.5(SD)秒 ・色シートなし:15.3±12.4(SD)秒 これらを比較すると、健常者では、色シートなし、色シートあり、色シートなし条件のそれぞれ3回ずつの測定では有意差はなかった。また、日本人が好む色シートについては、もっとも好まれた色から、水色、緑、青灰色、黄色、灰色、ピーチ色、紫の順であった。 研究2:読み書き障害のある子ども(17歳のLDの男子)が色シートを使ったときの読みの変化について特徴を分析した。A君の好みの色シートは、青灰色であった。「オランダ語単語の指さし課題」において、はじめの色シートなし条件の3回の反応時間の合計は76秒、好みの色シートあり条件の3回の反応時間の合計は18秒であった。色シートなしだと、指し示された単語を探すのに健常者よりずっと長い時間がかかったが、色シートがあると、健常者と同じ時間で単語を探すことができた。
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