研究概要 |
1.障害児教育の経費に関する資料収集 障害児教育に係る経費支出の情報収集を行った。現在,公的な経費支出に関する資料として,「地方教育費調査報告書」が,会計年度ごとに報告されていることが分かった。その中では,学校教育・社会教育・生涯学習関連及び教育行政における地方公共団体から支出された経費や授業料等の収入実態が明らかにされている。障害児の教育経費に係わる関連支出は次のとおりである。 (1)障害児教育に係る学校教育費(支出)の現状 年度ごとに経常的に消費される支出の観点として,(1)人件費(本務教員給与,兼務教員給与,事務職員給与,実習助手などのその他の職員給与,共済組合負担金,恩給費,退職・死傷手当),(2)教育活動費(学級活動などの特別活動費,チョークや画用紙などの教授用消耗品費,旅費,印刷や電話料などのその他の教育活動費),(3)管理費(修繕費,学校警備などのその他の管理費),(4)補助活動費(健康診断等)(5)所定支払金(火災保険等)の経費分類がある。 また,消費的な支出以外に,土地や建物及び設備などの基本的な支出として,(6)土地費,(7)建築費,(8)設備・備品費,(4)図書購入の支出があることが分かった。平成15年度会計年度における障害児の生徒の一人当たりの経費は,約913万円(9,129,165円)である。これに対して,小学校では児童一人当たり約91万円(909,892円),中学校生徒一人当たりは,約102万円(1,028,802円)という現状である。単純に比較を行うと,障害児教育は通常の小・中学校の10倍の経費を要している現状がある。(就学奨励費,厚生労働省関連の福祉関係経費については,含まれていない。) (2)諸外国の障害児教育の経費システムの調査 障害児教育の経費について,イギリスとの比較を行うため,バームンガムLEA(教育委員会)及び特殊教育学校長に実地調査を実施した。障害児に係る経費として,日本のような経費システムではないため,在籍者数に対して学校全体の運営経費がいくら使われているかという観点で,職員構成・児童数・経費の調査を行った。調査校においては,約1000万ポンド(口頭)の経費で約20名の子ども(2才〜11才)が教育をうけており,概算では,日本円で一人当たり約1080万程度の経費を要していることが分かった。イギリスの障害児教育の経費については,信頼度の点において,確定的な資料にもとづいた検証と調査数を増やす必要がある。
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