研究概要 |
標数3の閉体上定義された超特異K3曲面で最も特別なArtin不変量が1のものの自己同型群の計算に取り組んだ。この超特異K3曲面はフェルマー型4次曲面と同型であることが知られている。フェルマー型4次曲面上には112本の直線が載っており、また射影変換として有限単純群PSU(4,3)が作用している。本研究においては、この超特異K3曲面のPicard格子を符号(1,25)のユニモジュラー格子に埋め込み、Leech 格子の有限幾何を用いて、自己同型群の基本領域を記述しようとする試みである。基本領域の記述は完了し、残された課題は、基本領域の各面に対応した自己同型を構成するものである。興味深いことは、基本領域を定める面の一部にフェルマー4次曲面上の112本の直線に対応するものが現れ、さらに基本領域の対称群として、有限単純群PSU(4,3)が現れることである。このことは、散在型有限単純群の研究で重要なLeech格子と代数幾何学の中で重要な曲面であるK3曲面との不思議な関係を示唆するものであり、今後の研究が大切になってくる。Leech格子の自己同型群をその中心で商を取ると散在型有限単純群の一つコンウェイ群が現れる。コンウェイ群のある部分群としてPSU(4,3)は実現できるが、上述の例は、コンウェイ群のある部分群とあるK3曲面が対応することを示唆するものであり、新しい研究の視点を与えるものと考える。現在までに標数2、3の例はあるが、別の標数の場合の例構成が今後の課題である。
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