研究課題
双対性(duality)とは、異なる自由度・作用汎関数・対称性・相互作用等を持った物理系が量子論としては全く等価になることを指す。特にAdS/CFT対応は、ゲージ理論と重力理論が実は同じ理論の二つの側面であるという大胆な予想であり、これを理解することは弦理論の最も重要な課題の一つである。AdS/CFT対応によれば、任意のN=1超共形対称性を持つ4次元ゲージ理論に対応する5次元のSasaki-Einstein多様体Yが存在し、Yの幾何学がゲージ理論の相関関数などに反映されると考えられている。ゲージ理論の場の演算子の量子補正を取り入れた厳密なスケーリング次元は、anomalyに由来するある多変数3次関数の最大化問題(a-maximization)として計算できることが知られている。しかしながら、「解の存在と一意性」「不安定極値(鞍点など)の非存在」といった基本的な問題が未解決であった。双対性の検証のためにはdual geometryを仮定せずにこれらを示す必要がある。Quiver gauge理論の場合に上記3次関数がzonotopeと呼ばれる3次元凸多面体の体積として特徴付けられることを発見し、体積の関数の凸性(Brunn-Minkowski不等式)を用いてこれらの性質を証明することができた。また異なる解の間の隣接関係(繰り込み群の流れ)についても新たな知見を得ることができた。また応用として、AdS_5×Y上のtype IIB弦理論でHorizon多様体YがトーリックSasaki-Einstein多様体である場合について、対応する4次元N=2超重力理論vector multiplet moduli spaceの計量の正値性とattractor方程式の解の一意性が示された。
すべて 2007 その他
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数理科学 45・1
ページ: 51-57
別冊数理科学 特集 : 「双対性の世界」-諸分野に広がるデュアリティ・パラダイム-
ページ: 24-31
arXiv : hep-th/0610266, UTMS 2006-28 Journal of High Energy Physics (投稿中)