研究概要 |
量子統計力学として定式化できない困難な問題を部分的に定式化する方法としてRandom point processesを捉える立場からBose-Einstein凝縮の状態にある系の性質を研究した。 まず,弱い外場を伴う系の粒子の位置の確率分布を決定する研究については,昨年度すでに,平均場理論を用いれば,外場が弱い極限での確率分布は,低密度の場合においては理想気体の場合と一致するが,擬縮系の確率分布は理想気体の擬縮系の場合に比べ,さらに高密度になるとの結果が得られていた。今年度はこれに,平均場相互作用を粒子密度の2次式からより広い関数のクラスへと一般化した場合についての考察を加えた。すなわちこの場合は,大偏差原理のテクニックが応用でき,通常の2次式の場合の解析に帰着することができる。さらに,作用素環を用いた定式化との関連を見やすくするための考察を付け加えた。(論文執筆中) また今年度より新たに,Bose-Einstein凝縮の状態にある理想気体の密度分布を中心極限定理や大偏差原理の立場から特徴付ける研究に着手した。確率論一般におけると同様に,点過程の場合も極限定理を調べることは重要な問題である。特にBose-Einstein凝縮状態にある系の密度分布の大偏差原理は,今まで手付かずの分野であった。これには,非有界自己共役作用素から得られた局所Trace class作用素の解析が必要になる。そのため,関連するresolventに関する収束や作用素半群に関する評価など,どちらかというと,確率論的よりは関数解析的手法が主であった。結論として,Gaeltner-Ellis型の大偏差原理に定式化することができ,対数的モーメント母関数の具体的な関数解析的標識を得る事ができた。(論文執筆中)
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