研究概要 |
研究分担者がそれぞれの分担課題に関して恒常的に検討を続けた。今年度の主な研究実績は以下の通りである。 1.中尾は、楕円型境界値問題および定常Navier-Stokes方程式の解に対する精度保証付き計算法を、より実用度の高いものに改良・拡張することを試みた。具体的成果は以下の通り。 (1)重調和方程式の解に対する有限要素解の構成的誤差評価を与え、その応用として2次元Driven-Cavity問題の解の数値的検証を実現した。 (2)空間3次元熱対流問題の解の検証のためにスペクトル法をもとにした数値的存在検証手順を定式化し、自明解からの分岐直後の解の数値的存在証明に成功した。 (3)強圧的でない楕円型作用素の有限要素解に対する構成的a priori誤差評価定数を与えた。 (4)本質的スペクトルを持つ無限領域上の作用素のスペクトルギャップを数値的に検証する方法の定式化を与えた。 2.横山は、記号・代数処理と数値処理の効果的融合研究として、実現の可能性の高い、多項式の分解体計算の効率化とパラメータで記述されるイデアル(代数多様体)の安定性の解析を行なった。特に、分解体では、ガロア群計算を元に計算を線形代数計算に落とすことができ、この部分に根の近似を効果的に使うことが可能になる。 3.吉川は、解析学の立場からの計算可能性について次の検討を行った。 a.八杉満利子教授(京都産業大学理学部)主催の計算可能解析関連のセミナーに出席し,発表および討論を行った.また,林晋教授(京都大学人文学研究科)主催のヒルベルト計画をめぐる研究会に出席し,討論に参加した. b.Ning Zhong教授(シンシナティ大学)とソボレフ空間を計算可能解析学の立場から,特に,近似理論との関係を明らかにすることを目的とする研究を行った.これについては,成果発表のための準備をしている.
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