研究概要 |
初年度である本年は、移動境界問題として、主にステファン問題(氷が融ける過程を記述したもの)を取り上げ、空間1次元、および、2次元以上について、移動境界を捉える数値解法を検討した。研究代表者と分担者に加え、九州大学大学院数理学府D2の村川秀樹氏に研究協力者として加わって頂き、3名で研究を遂行した。 ここで、移動境界とは氷と水との境目であり、氷が解けることにより、それが時間とともに移動する。この問題に対し、Threshold Competition Dynamics法とある特異極限を伴う反応拡散方程式を組み合わせることにより、移動境界を捉えることができる有効な数値計算ができた。この方法の理論的な裏付けとして、我々の手法による解が、L^2の強位相で、時間L^2空間H^1の弱位相で収束することを数学的に証明した。これは、1相(水の温度分布のみを考える)と2相(水と氷の両方の温度分布を考える)の両方について成立する。 この成果は、現在、本研究課題のグループ3名の共著 R.Ikota, H.Murakawa, T.Nakaki : Approximation schemes to the classical two-phase Stefan problems by iterating the heat equation (仮題) として論文にまとめている。近日中に投稿予定である。 また、同じアイデアをporous medium方程式(多孔質媒体の中の流れを表す)に適用することも研究した。ある研究会で途中経過を発表した際、外国の研究者から、Scale不変な反応拡散系についてのアイデアを頂き、その不変性を持つ条件を導いた。その下で、数値実験を続行し、良好な数値解と数値的な移動境界を得た。これについては、次年度に研究を引き継ぐ予定である。
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