研究概要 |
1.本年度は本研究の初年度である。研究代表者一瀬は,極く最近,本研究の第一歩のである,空間3次元Dirac方程式から得られるradial Dirac方程式に対して,経路の空間上の可算加法的測度を構成し,そのGreen関数の数学的厳密な経路積分表示を確立し,学術誌(J.Math.Phys.)にそれを書いた。radial Dirac方程式は係数にr=0で特異性を持つため,一瀬が以前,田村博志と共に,空間1次元のDirac方程式に対して経路の空間上の測度を構成した方法を用いるには困難があった。しかし,2002年5月ベルギーのAntwerpで開催されたThe 7-th International Conference : Path Integrals from Quarks to Galaxiesに出席した折,経路積分の物理サイドの専門家であるH.Kleinert教授(Berlin自由大学)とA.Inomata教授(New York州立大学)に会い彼等と討論し,彼等がCoulombポテンシャルを持つSchrodinger方程式等に用いた特異性を回避する方法を知り,それがうまく使えたのであった。 2.その場の量子論の問題への応用として,G.A.Battle and L.Rosenの論文"The FKG inequality for Yukawa_2 quantum field theory"(J.Statist.Phys. Vol.22, 1980)の結果の数学的厳密な経路積分的方法による別証明を与える試みを少しづつ始めている。 3.この研究はまだ端緒についたばかりであるが,この先の研究を進める上で何かヒントを得るべく未完のこれまでの結果を2005年6月チェコのプラハで開催されたThe 8-th International Conference : Path Integrals. From Quantum Information to Cosmologyで講演した。また,2005年10月フランスのLuminy/MarseilleのC.I.R.M.で開催されたあるConferenceに出席した帰途,アイルランドのDublin Institute for Advanced Studiesから招待を受けセミナー講演を行った。もちろんこのやり方でうまく行くかという質問を受けた。問題は,1.で述べた,一瀬がGreen関数を表示するために構成した経路の空間上の可算加法的測度の中身をもっとよく調べる必要があり,少し時間がかかることのように思われる。目下鋭意検討中である。
|