研究概要 |
本年度は多変数複素力学系の局所理論の中でも,特に2変数の半放物的不動点とその摂動に関する研究をEric Bedford (Indiana University)を日本に招聘し共同で行った.2変数半放物的不動点に対して,その収束領域とその上のファトゥ座標,および逆写像の安定集合である漸近不変曲線の構造を解明した.またこの不動点の分岐に関して,近似的Fatou座標の導入を行い,1変数の場合の拡張として,摂動から生ずるimplosionの現象およびLavours写像の構成を研究した.この研究は現在も進行中である.またエノン写像の場合に,グリーン関数から自然に定まるカレントが漸近不変曲線によって定まることを見出した.これは鞍型不動点における不安定多様体が同じカレントを定めるというBedford-Smillieの結果の拡張である.さらに半放物的不動点における漸近不変曲線による断面のコンピュータ画像を作成して,摂動の構造に関する考察を深めた.また,多変数の場合のモデルとして,1変数の放物型不動点に対するアーベルの関数方程式の解(すなわちファトゥ座標)が,その摂動である吸引不動点に対するシュレーダーの関数方程式の解(線形化座標)のある種の連続的極限であることを示した.(数理解析研究所における研究集会:複素力学系とその周辺分野にて発表)この関係は多変数の場合の,収束領域における線形化写像とファトゥ座標の場合にも一般化される.さらに吸引的不動点をもつ写像によって不変な実超曲面に関してKang-Tae Kim (Postech)との共同研究を行った.
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