研究概要 |
代表者野村と分担者伊師は,管状領域と複素三角群の一軌道について,論文をまとめ,九州大学のプレプリント・シリーズに発表した.これは,通常のジーゲル右半平面における首座小行列式の一つの性質を一般の対称管状領域にまで,ジョルダン代数の枠組みを用いて拡張し,次に,その性質は一般には対称性がないと成立しないのだが,対称性がないけれども成立するような等質開凸錐の系列をあげ,最後にそれが何故一般の非対称開凸錐では普通成り立たないのかを説明する事情を解明した.それはガウス分解における対角行列の成分がどう書けるかに完全に依存していることがわかった.副産物として,伊師が2001年に発表した論文で導入された基本相対不変式が,等質開凸錐に付随するクランの複素化での右かけ算作用素の行列式の既約成分としてすべて現れるということがわかった.以上の研究は平成19年3月の日本数学会函数解析学分科会において報告する.また,以上の研究を受けて,野村はさらに,非対称な開凸錐で,対称錐に近い性質を持っものの系列をいろんな形で抽出している.このことはすでに国内外の研究集会やセミナーで,発表を重ねて来た.伊師との研究討議も頻繁に行った. また伊師は,正規j代数の忠実な正規シンプレクティック表現の標準的な構成を,Diff.Geom.Appl.に発表した論文で与えた.一方で,どの正規シンプレクティック表現に対応する正則写像の像も,ある公理をみたす行列のなすベクトル空間を用いて,通常のジーゲル上半空間の部分集合として記述できる.これにより,Xuにより得られている等質ジーゲル領域の実現を自然に得ることができた. 本科研費で,伊師をフランスのアンジェ大学とランス大学に派遣した.アンジェ大学のGraczyk氏との研究討議を通じて,伊師はベクトル値正値2次形式に付随するWishart分布を導入し,期待値と分散を計算した.Riesz超函数との関わりについても論じている.
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