研究課題
調和写像流はユークリッド空間に埋め込まれた多様体に像が含まれるディリクレエネルギーの臨界点として定義される。そのような写像をつくるために、このディリクレエネルギーの勾配系を考える。この解を調和写像流という。ディリクレエネルギーの代わりに写像の全変動を考えたものを全変動流という。このモデルは画像処理で輪郭を保ちながらノイズを除去する上で優れているため、しばしば用いられるが、その解析的性質はまだ十分解明されているとはいえない状況である。本研究では全変動流方程式を近似する離散系である常微分方程式系を提案した。その近似法は有限要素法とも異なり、区分的な定数である写像を考えるものである。このように解釈しても、なお方程式は解の勾配がゼロのところで不確定性を持つ。この特異性は平均曲率流方程式の等高面方程式の解の勾配がゼロになるところの特異性に比べて強いのである。従って、離散系といえども、解の勾配がゼロとなる部分での変形速度をどう定義するか、必ずしも自明ではない。本研究では、境界条件ディリクレ型の場合とノイマン型の場合、それぞれに対して離散系の解の存在を特異性のゆるめた近似離散系の解の極限として示した。ディリクレの場合も、ノイマンの場合もエネルギー汎関数と、その劣微分の扱いが鍵になる。別の問題で用意したエネルギーの近似定理により、もとの離散系の解の存在が示される。但し、解の一意性は不明である。この離散系の近似能力を上げることにより、もとの全変動流方程式の解が構成できるかは今後の課題である。また、離散系についても区分的定数写像の不連続性が時間と共にその量を減らしていくのかどうかも、まだ未知である。
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