研究課題
電波望遠鏡で線スペクトルを観測するためには、電波分光計が必須である。従来よく使われてきたのは音響光学型電波分光計のようにアナログ型分光計であるが、時間安定度が悪くまた同じ性能のものを複数個作ることは困難であった。デジタル型分光計は、デジタル回路を組んで行うために時間安定度が高くまた同じ性能の製品を大量に作ることができるので、最近は実際の観測にも供されている。しかし、従来のデジタル型分光計はハードのデジタル回路を組み合わせて作るために、全く最初から設計して専用LSIの生産ラインを建設するためには億円単位の経費が必要である。またハードウェアーの回路を用いるために、観測時の融通性が少ない。そこで我々は性能が時間的に安定し、同じ性能のものを多数作ることが可能であり、周波数分解能などの性能パラメータが容易に変更可能であり、且つ安価に製作できるソフトウェアー電波分光計を開発した。これは最近の高速CPUを搭載した市販のパーソナルコンピュータを用いたものである。本年度はそのプロトタイプを開発し、試験した。時間的に流れてくる観測信号を高速でサンプリングし、それを離散フーリエ変換したあと2乗することによってパワースペクトルを得るという原理である。フーリエ変換には高速フーリエ変換を用いた。但し、有限時間のサンプリングなので、周波数スペクトルには有限の周波数分解能が発生し且つサイドロープもできる。このサイドロープを抑えるためにハミングの窓関数をかけた。開発の結果、周波数帯域幅が512MHz、分光点数が1万点以上の電波分光計を実現することができた。これを実際の電波望遠鏡に搭載して天体を入れて試験したところ、初期の性能が達成され且つ時間安定度も非常に高いことが実証された。今後は、より高速のCPUを搭載したパーソナルコンピュータを複数台並列化して、処理の高速化を図る予定である。
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Publications of the Astronomical Society of Japan 57
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Astrophysical Journal 620
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