研究概要 |
本研究においては、星周条件における気相からのダスト凝縮速度を求めることをめざしている。気相からの核形成過程を実験的に研究することは、技術的に大きな困難がともなうため、その第一歩として、本研究においては、気相分子と固体分子がひとしい金属鉄をターゲットとする。核形成を支配する要素のうち、表面張力は既存データがあるため、ガス分子の付着確率を決定することが、核形成速度を決定することになる。本年度はまず,基盤の存在する条件における鉄の凝縮係数の決定に成功した.凝縮係数は温度,ガス分圧の関数であると予想されるため,基盤温度,ガスフラックスを変化させた実験を行った結果,大局的に凝縮係数は1に近いが,平衡に近い条件(過飽和度が比較的小さい条件)では1より小さくなるが,非平衡条件においては1であることが判明した.その値を温度,圧力の関数としてした.成長における凝縮係数を核形成における凝縮係数に等しいと仮定し,それを用いて,晩期星周の極端に非平衡条件でダスト成長がおこる場合と,初期太陽系のような比較的平衡に近い条件で成長が起こる場合の,粒子成長における凝縮係数の役割を評価した,原料消費を考慮したカイネティックなダスト形成モデルを用い,ダスト成長速度,平均サイズ分布,成長時間などを求めた.その結果,凝縮係数が1あるいはそれにきわめて近い場合,凝縮係数の効果は小さいことが判明した.現在,より広範囲の温度,過飽和度条件下の実験を進めており,次年度における核形成の凝縮係数とあわせ,より精密な議論が展開できる予想である.
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