研究概要 |
初年度において、原子炉ニュートリノの振動パターンを観測し、反電子ニュートリノの伝搬を解明した。低エネルギーの反電子ニュートリノの観測と伝搬の理解に成功したことで、これを応用し、地球内部起源反電子ニュートリノの観測を実践し成功した。これにより新しい学問分野「ニュートリノ地球物理」を創出することができた。これをさらに推進するには、観測精度の向上や場所依存性・方向分布などのより多彩な情報が望まれる。そのためには、(1)原子炉ニュートリノの寄与の精密な評価(2)不純物起源のバックグランドの理解と除去(3)測定装置の改良による統計量や方向情報の取得(4)複数の観測装置での世界規模の観測ネットワークの構築(5)地球物理学者との連携による特徴的な地域の特定、などが必要となる。 (1)に対しては、原子炉ニュートリノデータの蓄積とともに、有効体積の増大、原子炉・地球ニュートリノを統合した解析による情報の有効活用、全位置での放射線源による較正を通した系統誤差の縮小を行った。(2)にたいしては、主要なバックグランドである^<210>Po(α,n)^<13>Cが、反応断面積の不定性などにより評価誤差が大きかったところを、実際に放射線源を作成して検出器内に配置し較正することで、評価誤差の縮小を行った。(3)に対しては、方向を検知するためのLi含有液体シンチレータの開発や高焦点深度撮像装置の開発などを行った。(4,5)に対しては、国内外のニュートリノ研究者や地球物理学者と共同の研究会を開催するなどして、新規の観測装置の実現とニュートリノ地球物理コミュニティーの育成のための活動を行ってきた。
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